【第6回】
◆大切なのは、頑張りすぎないこと
――Iさんは、原稿枚数が全ライターの中で一番多いんです。
Iさん 全然知らなかった(笑)。
(毎月原稿量トップなのです!)
――量をこなしつつも、内容も正確に起こされているのがIさんのすばらしいところです。
Nさん すごい。1日何時間くらい作業されているんですか。
Iさん 6時間はパソコンの前に座っていますが、違うことをやっているときもあるのでよく分かりません。でも、夜に仕事はしないかな。
Kさん 日中だけでそんなにこなしてしまうのね!
Nさん 作業を始める前に、「きょうは30分だけ進めよう」といった目標を決めているとか?
Iさん いえ、特にないです。とりあえず、朝の用事が済んだら座って仕事をして、お昼になったら食事をして、午後も仕事をして、そして夕食を食べる。
Nさん シンプルにやっているうちに、量をこなせていけたということですね。いっぱいやらなければと思って頑張りすぎると、意外と作業が長続きしないのかもしれません。
――枚数を増やすためには、コンスタントに依頼を受け続けることも一つの方法だと思いますが、会社に「月○時間はやりたい」といった要望を伝えたことはありますか。
Iさん そんなこと一度も言ったことない(笑)。仕事がしばらく来ないときもあるし、来るときは来る。完全に会社任せです。
Kさん 早くこなすから、きっといっぱい仕事を入れてくれるのよね。
――逆に、「この内容はできません」と断ることはありますか。
Iさん それもないです。断らなければいけないほどすごいのは来ないし、そもそも仕事を断るという発想がなかったので。
――Iさんは、さまざまなジャンルを担当していただけるので、こちらも何でもお任せできるという安心感があります。
Iさん そうでしょうか(笑)。
――たとえば、「あした納品の特急で何時間ぐらいできますか」と聞かれたら、Iさんならどう答えますか。
Iさん 音質が悪くないなら、お昼に素材をもらえたら1時間分はできるかな。でも、昔はもっとすごいのがありましたよね?
Kさん 昔はひどかった! 夜中に作業しないと間に合わないですから。1時間45分の音声を、夕方4時ごろに駅で受け取って、翌日の昼までに納品するんですよ。「1時間45分!? 電話では1時間30分と聞きましたが?」と担当者に言ったら、「15分増えても同じですから」なんて返されるの。違うのにねえ。それで、深夜2時ごろ「あの校閲者は今ごろ寝ているんだろうな……」と恨めしく思って。
Iさん 昔はよく、「校閲者はライターに渡したら、それで終わりだと思っているのよ!」と言っていましたもんね(笑)。
Kさん そう! 難しい内容も渡してしまえば「はあ、清々した」と思っているんだろうなって(笑)。
――そんなこと思ってません!(笑)
(そんなこと思ってませんよ~!)
◆腰痛対策は、椅子と机の見直しから
――Kさんは、手書きの時代はどのくらいの量をこなしていましたか。
Kさん 月平均で、原稿用紙2,000枚は書いていました。多いときは3,000枚を超えることもありましたよ。
――そんなに書いたら手がおかしくなってしまいますね。
Kさん でも私、なぜか腱鞘炎になったことがないの。筆圧は強かったのにね。腰痛もありませんよ。
――座り仕事にもかかわらず、とてもうまくやられていたのですね。
Kさん 今思えば、40代、50代のころは体力がありました。それに加え、手書きのころは起こした原稿を会社まで届けに行っていましたから。
――デジタル化が進み会社に行くことがなくなった分、昔に比べて座る時間が長くなっているはずですが、普段から気をつけていることはありますか。
Nさん 私は意識して体を動かすようにしています。この間、椅子の代わりにバランスボールに乗って作業したら、大失敗しちゃって。難しかったです。
(バランスボール良さそうなんですけどね)
Kさん 私たち、立って作業ができませんからね。フットスイッチを踏まないといけないから。
Nさん だからこそ、椅子選びには結構気を遣っています。
Iさん 足・椅子・テーブルの位置は重要です。椅子とテーブルの高さを自分の体に合わせて、フットスイッチを乗せる台も作っています。だから腱鞘炎や腰痛もないし、肩も凝らない。それから、机の上には何がどこにあるか全部分かるようにしています。使ったら絶対に元の位置に戻している。
Nさん 環境を整えるって大事ですよね。なるべく体の負担を減らしてゆったりした気持ちでやると、仕事もいっぱいできると思います。たまには、ジャージを着て作業をするのもおすすめですよ。
――皆さん、自分にぴったりのやり方を見つけられていますね。健康的に、長くお仕事を続ける秘訣は、自分の体にやさしい環境を整えることですね。
(第7回へ続く)
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