座談会「おこしびとに聞く!」(第1回)

『文字起こし(テープ起こし)の仕事』『テープリライター』とはどんな仕事か――。

手書き時代を知るライター歴46年のベテランKさん

毎月1位の原稿量をこなすライター歴28年のIさん

タイピングスピードトップクラスのライター歴11年のNさん

ライターを始めたきっかけや「自分だけのやり方」「ライターだからこその苦労話」などをうかがいました(2018年収録)

 

(左Iさん、真ん中Kさん、右Nさん)

 


【第1回】

 

――Kさんはライター歴46年の超ベテランです。「自宅でできるきれいな仕事」という新聞の広告を見て応募されたとか。

 

 

Kさん 私がテープ起こしの世界に入ったのは1972年のことです。それまではOLを5年間やっていて、退職後は海外技術協力事業団(現JICA)で派遣専門家のお手伝いをするアルバイトをしていました。でも、朝日新聞の求人欄に掲載されていた「自宅でできる知的できれいな仕事」というキャッチコピーがすごく印象的で、どんなお仕事なんだろうと思って応募したのが始まりです。

 

――もともと文章を書くのがお好きだったんですか。

 

Kさん OL時代に貿易関係の仕事をしていたのですけれども、そのころはワープロも何もありませんから、部長が海外に出張すると、報告書を書くために口述筆記(口頭で述べられた内容をその場で記録すること)をしていました。そんな経験もあって、知的できれいな仕事って筆耕屋さんみたいなものかな、ちょっと受けてみようと思ったんです。

 

 当時は渡辺博史社長(初代)がやっていらして、普通の家の二階屋が事務所だったものですから、心配して家人が付いてきました。「女性がそんなところに一人で行って大丈夫か」って(笑)。

 

 それで、新聞の政治欄と三面とスポーツ欄だったかな。3種類ぐらい社長が読まれるのを聴き取って書く。それが試験でした。いまだに覚えているけれど、「ノウコウシリョウ」という言葉を聞き間違えて、「農耕肥料」と書いたんです。でも正しくは「濃厚飼料」だった。日本語は発音の似ている言葉が多くてとても難しいと思いましたね。

 


 

――Iさんはライター歴28年です。きっかけはなんですか?

 

 

Iさん 私は平成2年に始めましたが、Kさんと同じように、新聞を読み上げられてそれを書き取るという試験を受けました。子供が小学校に入る前だったかな。とにかくまだ小さかったので、家の中でできる仕事がしたいと思っていたんです。

 

 そのときに、ちょうど折り込みチラシで玉川髙島屋カルチャーセンター(東京都世田谷区)が主催していたテープリライター養成講座を見て、「これだ。私はこういうことをやりたかったのよ!」と思って、すぐに応募しました。

 

――髙島屋の案内のどこで「これだ」と思ったんですか。

 

Iさん 基本的に家で仕事ができることと、私もキャッチコピーにあった「知的で」という言葉に惹かれました。何より自分で自由に時間を使えるところがすごく魅力的でしたね。あのころは週2日くらい、原稿をフロッピーディスクに入れて出社することになっていたんですが、子供が学校に行っている間に帰宅できるので、ちょうどいいペースでした。今思えば、自分の生活にすごく合っていたと思います。

 

――玉川高島屋カルチャーセンターの1期生ということですが、当時はどのような授業を受けていたんですか。

 

Iさん 毎週土曜日だったかな、テープ起こしの基礎知識を勉強したり、テレビの音を自分で録音してそれを起こすという宿題が出ることもありました。実際に起こした原稿は、講師の先生が添削して返してくださいましたね。そんな感じで半年間通い続けて、本気でやってみたい人は修了後に採用試験を受けるような流れでした。

 

――「これだ」と思った気持ちは、28年たった今も?

 

Iさん ええ、今も変わらずこの仕事が好きです。というか、好きじゃないと続かないですよね。だって、すごく効率がいい仕事だとは思わないし(笑)。でも文章をいじったりするのは好きだったので、その面白さはありますよね。

 


 

――次にライター歴11年のNさんです。ライターを始めたきっかけはなんでしょう。

 

 

Nさん 私も子供が小さかったので、家でできる仕事がないかと思って始めたのがきっかけです。前職はコンサルタント会社で資料を作ったり、テレビ局で字幕を作る仕事をしたりしていたのでタイピングには自信がありました。在宅で、かつ自分の強みを生かせる仕事をということで、テープ起こしを選びました。

 

 お二人の深い話に比べてライトになってしまい申し訳ないのですが、そのままなんとなく11年が過ぎてしまった感じです(笑)。でも、仕事と家庭をバランスよくやっていけるということで、長く続けてこられたのかなと思います。

 

――タイピングが速いですよね。収録時間より早い時間で起こせるとうわさが(笑)。

 

Nさん 条件がそろっていれば収録時間の4分の3ぐらいでできます。でも“音が良くて、話し方がスムーズな場合”ですよ! そんなのは年に数回あるかないかなので、毎回そんなタイムは出せません(笑)。

 


(第2回へ続く)

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